第56章

九条遥は考えなかったわけではない。むしろ、彼女はすでに覚悟を決めていた。二ノ宮涼介が時々恋ちゃんに会わせてくれるなら、恋ちゃんは二ノ宮涼介と一緒にいた方が、自分と一緒にいるよりもずっと良い生活ができるだろう。

「恋ちゃんが二ノ宮涼介と一緒にいれば、介入手術さえできないなんてことはあり得ないわ」九条遥は自嘲気味に言った。「初美、私はもう恋ちゃんを育てられない。彼女は今、もっと良い物質的条件が必要で、私にはそれを与えられないの」

もし彼女が健康な体を持っていたら、二ノ宮涼介と全力で親権を争うつもりだった。

たとえ勝ち目がなくても、戦うつもりだった。

「でも恋ちゃんは遥と一緒にいれば、精神...

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